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2017年11月7日火曜日

技能実習制度を本物にする

以前から気になっているのは、外国人技能実習制度の問題です。

この制度は、本来、技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材を育成することを目的としており、日本の国際協力・国際貢献の重要な一躍を担うものと位置づけられています。

しかし、こんな立派な建前があるにもかかわらず、現実に起こっていることは、メディアなどで取り上げられているとおりです。すなわち、日本の受入企業側は労働力の不足を補ってくれる者として外国人技能実習生を受け入れ、外国人技能実習生は3年間日本にいて得られる収入を目当てにやってきます。

ときには、日本の受入企業は、コスト削減圧力のなかで、相当に厳しい条件を強制して外国人技能実習生を受け入れ、それに耐えられなくなった実習生はいつの間にか姿を消してしまう、という話さえ聞こえてきます。

ここで大きな問題となるのは、日本でどのような技能を身につけるのか、実習期間を終えてそれがどれだけ身についたのか、に関する明確な評価とモニタリングが見えないことです。あるいは、形式的にそれがあったとしても、誰がどう評価・モニタリングしたのか、送り出し国へ正確に伝える仕組みが整っているのか、という問題です。


そもそも、日本の受入企業にとっては人手不足が最大の問題です。日本人よりも賃金が安くできるから外国人技能実習生を使っているのでは必ずしもなく、日本人でも働き手がいない、あるいはいても長く働いてくれない、という実態があります。ある工場では、1ヵ月ぐらいでどんどん辞めていくそうです。また、少し注意しただけで、キレる日本人の若者もよくいるそうです。

そんな状況になれば、1~3年という長期にわたって、ずっと作業をしてくれる外国人技能実習制度は、とてもありがたい制度に違いありません。工場などの人員配置計画が立てられるので、安心して生産することができるからです。そうであれば、日本人のアルバイトよりも高いコストを払ってでも、外国人技能実習生を使おうという気になります。

他方、インドネシア人技能実習生にとって、日本は今でも憧れの国です。たくさん稼げる国というイメージが根強く、難民申請でも何でも、どんな手段を使ってでも、何度も行きたいという人が少なくありません。

しかし帰国後、日本で得た技能を生かして何かを始める者はいても、それは多数派ではありません。日本滞在中に得た収入をもとに、日本語を生かせる事業を行ったり、元手をあまり必要としない食堂を開いたり、様々です。

もちろん、自ら会社を起業し、日本で学んだ技能を生かして、かつての日本の受入企業と取引を行っている者もいます。彼らは成功者として、技能実習生OB組織であるインドネシア研修生実業家協会(IKAPEKSI)という団体を自ら立ち上げ、後輩たちの活動を積極的に支援しています。IKAPEKSIの立ち上げには、日本政府もインドネシア政府も何も関わっていませんが、今では両者は積極的に協力関係を構築しています。

ちなみに、私は、2015年から、このIKAPEKSIのアドバイザーを務めています。なぜか、彼らから請われて、承諾したものです。

IKAPEKSI総会にて(2015年3月8日、ブカシ)

日本の多くの中小企業では、後継者の不在により、これから廃業せざるを得ない企業がかなり出てくるものと思います。そうなると、それらの企業がこれまでに培ってきた技能、技術、ノウハウなどは当然消えていきます。それら中小企業の立地する地域にとっても、地域産業が衰えていくことになります。

しかし、インドネシアをはじめとするアジア諸国の企業は、日本の中小企業がどのような技能、技術、ノウハウを持っているのか、それらがどのぐらいの水準で、自分たちにとって必要なものかどうか、ということに関心を持っています。日本ではなくなってしまうものでも、日本の外ではまだ必要とされる技能、技術、ノウハウがあるかもしれません。

もし、自分の持っているものがまだ日本の外では役に立つと分かったら、日本の中小企業はどうするのでしょうか。日本からは門外不出なのでしょうか。それとも、世界中のどこかで、自分が手塩にかけて築いてきた技能、技術、ノウハウが伝承され、それが次の展開へつながる、と思えるでしょうか。

後者もありだとするなら、そこで重要なのは、その日本の中小企業が手塩にかけて技能、技術、ノウハウを何年もかけて築いてきたことへの敬意、リスペクトではないでしょうか。その苦労や困難に思いを馳せ、本気で伝承を受ける者による心からの尊敬ではないでしょうか。

それまで見たことも聞いたこともない企業が突然現れて、札束をちらつかせながら、買収を持ちかけてきたら、日本の中小企業はどう対応するでしょうか。どうにもこうにもならないと諦めていた企業にとっては、大歓迎でしょうが、自分のしてきたことへの何の尊敬も示さない相手に対して不信感をもつ場合もあるのではないでしょうか。

では、日本の中小企業は、どういう相手なら、心を許せますか。たとえば、かつて3年間、一生懸命尽くしてくれた元外国人技能実習生が相手だったら、どうでしょうか。

インドネシア人技能実習生は、他国よりも長い歴史を持っており、プラスもマイナスも、様々な経験の蓄積があります。今のところ、帰国した技能実習生を会員とする団体であるIKAPEKSIが存在するのもインドネシアだけです。

IKAPEKSIのメンバーは、自分の仲間が日本の受入企業でどんな仕打ちを受けたか、なぜ日本で姿を消したか、帰国後どのように事業を成功させたか、そういったことをみんな知っています。日本側には報告しません(私にも言いません)が、仲間内ではそうした情報を常に交換・共有しています。

技能実習制度を安易に考えている関係者には、そのことをしっかりと認識してほしいです。IKAPEKSIのメンバーが「日本は素晴らしい」と口々に語るその裏には、幾重もの技能実習制度をめぐる出来事の蓄積が重なっているのです。

こうしたことを踏まえて、私は、技能実習制度を本物にすることに注力したいと考えています。

すなわち、本当の意味での技能、技術、ノウハウ等の移転を図り、それが送り出し国の経済発展につながるためにです。同時に、外国人技能実習生が、技能、技術、ノウハウ等を移転してくれる日本の中小企業のこれまでの軌跡に対して心からの敬意を示せるようにしたいのです。

それが故に、日本のどの中小企業のどのような技能、技術、ノウハウ等がインドネシアのどの地域のどの中小企業にとって有益なのかをあらかじめ意識し、日本側とインドネシア側がそれらの移転に同意したうえで、インドネシアから技能実習生を日本の中小企業へ送り出す。

日本の中小企業は3年間の移転カリキュラムとプログラムを作成し、その進捗を図る。終了時までに移転レベルに達したかどうかの試験を何度か行い、終了時には技能認定証を発行する。後は、その技能認定証をインドネシア側に認知させることで、技能認定証が帰国後の就職の際に効力を発揮する。これにより、インドネシア側に対して、日本側からの具体的な技能、技術、ノウハウ等の移転と人材育成の成果を示すことができる。

インドネシアと30年以上関わり、IKAPEKSIのアドバイザーでもある私は、そうした技能認定証をインドネシア側(中央・地方)に認知させるための働きかけを行うと同時に、帰国後の元技能実習生の活動をIKAPEKSIとともにモニタリングし続けることができます。

また、日本の中小企業での技能実習生の受入に当たっては、前もって、技能実習生に移転されるべき技能、技術、ノウハウ等についての説明や、インドネシア人との接し方やインドネシアに関する基本情報を、事細かくアドバイスすることが可能です。また、受入中も、技能実習生のよろず相談をインドネシア語で対応できます。対象実習生の人数が多くなれば、よろず相談のできる体制を整えます。

このように、インドネシア人専門として丁寧に対応しながら、何としてでも、技能実習制度を本物にしたいと思います。そのために、技能実習生の送り出し・受け入れの双方へ具体的に関わる準備を進めていきたいと思います。

もし、日本にいるインドネシア人技能実習生がインドネシア語で相談できる窓口がなくて困っている方がいれば、とりあえず、私宛にご連絡ください。

おそらく、今後は、中小企業向けの技能実習制度だけでなく、農業や水産業、看護や介護での研修生でもまた、同様のアプローチや活動が必要になってくると思われます。日本にとっても、インドネシアにとっても、ウィンウィンになる形を目指す必要があります。

お仲間になっていただける方々も必要になってくると思います。その際には、よろしくお願いいたします。

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